「な…なんだこれは……」

目の前の光景にただただ驚愕していた。
何もなかった所からとてつもない美貌を兼ね備えた女の人が突然現れたからである。

「…女……神……?」

episode01:阿比留 恭介

頭が痛い。意識がはっきりしてきた。
どうやら気絶していたようだ。
意識が戻り始めた頭で自分の状況を確認する。
どうやら椅子に固定されているらしい。
そんな時、声が辺りに響いた。

「おや?最後のプレイヤーさんの阿比留恭介(あびる きょうすけ)さんが目覚めでの様ですね。さてと、役者は揃いました。」

辺りを見渡すと、同じ状況の人がざっと100人ぐらい…だろうか、とにかく、大勢のひとが並んでいた。
その列の前の1段高くなっている所に演説台の様なものがあり、そこに誰か立っているのが見える。そいつがさっき喋っていた奴の様だ。さらにそいつが続けて、

「さて、今回お集まりいただいた皆さんは選ばれた方々です。存分にこのチャンスを与えられたことをお喜びくださいませ。」

すると集められた人々が騒ぎ出す。

「ふざけるな!どういうつもりだ!」
「なんなの!?これは!警察呼ぶわよ!」

あらゆる声が飛び交っていると、演説台の男が言う。

「いやいや、警察に連絡するもなにも、皆様方の荷物はあずからせていただいてます。まずその身動きできない状況をどうするのですか?低脳なやつはこれだから困るんですよ」

その最後の言葉に腹を立てたのか、1人の男性が怒鳴る。

「誰が低脳だとごらぁ!ふざけてるとぶっ飛ばすぞカス!」

それに冷静に返す演説台の男。

「君は世間で言う 不良 と言うやつですか?弱い犬ほどよく吠えると言うのはまさにこと事ですね。ちょうどいい、周りに自分の状況をわからせるいい見本になってもらおうか。déesse!」

最後の掛け声に合わせて突然、不良の身体の中心がふき飛んでいた。
あり得ないぐらい大量の血が吹き出る。
目の前で不良が死んだ。辺りは騒然。泣き叫ぶ声、許しをこう声、怒り狂う声。それらを黙らすかの様に演説台の男が叫ぶ。

「黙れ‼︎これぐらいで騒いでいる低脳が‼︎」

辺りは物音ひとつないぐらいまで静まり返る。突然、プレイヤーと呼ばれていた自分達の中の若い男が喋り出す。

「今、あなたが最後に言い放った掛け声の様なもの、たしか〈déesse〉デエス、と仰いましたね。それはフランス語で女神を意味するものだ。その女神に関わる何かを得る人を決める予選が今から始まるのでは無いですか?」

その声に演説台の男が答える。

「素晴らしいですねぇ!そうです、まさにそのとうり。これは神を決める本戦への出場権をかけた、予選となっております。本戦を勝ち抜いたものは今、私が不良を殺して見せたように、何でもできる能力、つまり神になれます!ちなみにここは出口もないので逃げられませんよ。」

神を決める…?
しかもここには出口がない、つまりこいつに従う他、助かる道はないようだ。

「さて、余興はこれぐらいにして、そろそろ予選を開始しましょうか、
----これより、神選別予選開始をここに宣言しますっ!!」


予選 残りプレイヤー 100人中99人…