そうだ、
恵はキレると
見境なくなるんだった。

例の女はその光景を
震えながら見ている。

同情するような光景だが
ご愁傷様とも思う。

恵のキレるパターンは
幾つかあるが、
その中でも大切な物や人が
傷付けられた時には
今みたいな感じになる。

男数人を倒した後、
女にジリジリと
追い詰めるように
ゆっくりゆっくりと
近寄って、後ろの壁に
ドンと背中をぶつけた女の
胸倉を掴み持ち上げた。

「亮を拉致るとか
いい根性してんじゃねぇか」

恵の顔は見えないが
半年前の文也よりも
絶対零度のオーラを出している。

女は苦しそうな声をあげた。

流石にあれじゃぁ喋れない。

仕方なく出ていくことにした。

「おい恵、
そのままじゃ流石に
喋れないから一旦離してやれ」

恵が倒した男たちの
背中を踏みながら行く。

「亮!!」

女を離してこっちに
走って来る。


「怪我は?
何処も痛くないか?」

一瞬前までとは
打って変わって
俺を心配そうに見つめてくる。

「縛られてた手首が
多少痛むが
これくらい大丈夫だ」


ほらと両手を恵に差し出す。

「よかった……」

ギュウギュウと
力一杯抱きしめられた。

「金輪際、
俺や俺の家族に近付くな」

一旦離して、
言い放つと振り向きもせず
俺の手をとって繋いで
外に停めてある車に向かった。

乗り込むと
恵がキスしながら
服の中に手を入れて来た。

「ぁ、恵、此処じゃ嫌だ」

狭い車内じゃなくて
ベッドの上がいいなんて
“ヤらない”っていう選択肢は
最初からないのを
恵も解っているだろう。