と、喜んでる場合ではなかった。

内心では冷や汗ものだ。


いつ嘘がバレるかわからないし、その内

リーダーの武 (たけし)が組手でもやろーぜ。


などと言ってきたら洒落にならない。



嘘がバレれば…晴れていじめられっ子に降

格間違いなし……くそっ。 どうすれば…




不安の日々の中、俺は思い付いたのだ。



そうだ!!

本当にボクシングをやってしまえばいいん

だと。



早速ママの元へ…いゃ、違う。

中学生になる前に呼び方を変えると決めた

んだ…


「かっ、母さん! 」


「何よ、そんな急いで。」


(おっと、初めて母さんて呼んだのに違和感

なく返事を返してくるとは…我が母に脱帽)


「俺さ、ボクシングやりたいんだけど…

いいかな!? 」

(…どうしょうか…理由は。ケンカが

強く…いゃ、ダメだろ~)






「折角良い顔に生んであげたのに、残念

ね。 パパみたいになっちゃうわよっ。」


「いゃ!! それがなんというか、もっと体を

鍛え……」


うん?

今、なんと言ったんだ。

何やら予想の斜め下…じゃなくて。



予想外な返答だぞ、母よ。



「パパに相談してみなさい。」


んで、早速俺は親父の元へ。


「お、おやじっ…!」



「んっ!? 誰が親父だ!! 」

(こちらはどうやら、いきなりの呼び名

変更は無効なようだ)


「ぃや…あのさ、俺ボクシングやりたいん

だ。 やっていいかな? 」


「は~ん、さてはケンカだな!? 」



少々バカにされたが、親父は微笑みながら

了承してくれた。

ジムを紹介してくれるらしく、俺は親父に

ついて荒れ狂う男共の聖地へ赴く事になっ

た。


これは余談だが、親父はプロではないもの

の、全国高等学校ボクシング選抜大会の

チャンピオンだったらしい…

ジムの会長さんにプロになればよかったの

にと言われていた親父は少しカッコよく見

えてしまった。



今まで親父に怒られた事は無かったが、今

後も怒られないよう最大限気を払う事にし

よう。