日々の筋トレから自信の付いてきた俺はク

ラスでも目立つグループに参入していた。


授業中に騒いだり、授業をサボったり、時

には消火器を発射させた強者もいた。


当然俺もそのグループの一員だ。

それなりの武勇伝を立てねばなるまい。


ということで、手始めに隣のクラスの窓ガ

ラスを蹴破ってやった。

(解: 廊下で遊んでいた際、ちょっとジャン

プし過ぎて足が窓に当たって割れてしまっ

たと言う事故。)



更にはクラス内の嫌われ者の頭を、蛍光灯

でかち割わる。

(解: 教室でそのグループの奴らがサッカー

ボールを蹴っていた所、たまたま拓也の足

に当たったボールが蛍光灯を貫き、更には

それがクラスの嫌われ者である山口君の頭

上に降り注いだ奇跡的な事故。)



という偉業も成し遂げた俺はあっという間

に学年の中で知らぬものはいない程の知名

度を得たのだ。



「おぃ、拓也ぁ。 あれ行こうぜ。」


おいとそのクラスの不良グループは何人

かに声をかけると、教室からズンズンと出て

いく。


『あれ』とは…

多々ある不良の条件の中でも最上級に位置

付けされるそれは…即ち『タバコ』だ。




危険過ぎる事だが、折角のお誘いだ。

これを避ければ俺は晴れて、いじめられっ

子に大逆転間違いなし。


…行かねばなるまぃ。



不良グループは恒例のトイレに集まり一本

のタバコを何人かで回して吸ったり、個人

で買ったものを吸ったりとまぁ、今トイレ

の中はギャングのアジトと化している…


(解: そこまでひどくない、豊かな日本の少

年達である。)



「お、拓也はねーの!? おい橋本、一本や

れよお前。」



グループのリーダー格がそうメンバー

の1人に声をかけた。

そいつは橋本と言って、金持ちのボンボン

であるためカートンでタバコを常備してい

る。


「ん?おお、ほら拓也。」


「ああ、ありがと。 でも悪い、俺タバコ

は吸わない主義でさ。」



「…あ!? 」

目を丸くしてリーダー格がこちらを見る。


(目線が怖い…

だがしかしっ、ここで何か1つ自分には譲

れないものがあるという事を見せつけねば

今後もナメられたまま、ただの一員になってしまう。


(俺は譲らんぞぉ。 ダメ、ぜったい。)



「悪いな。 ちょっと今、ボクシングやっ

ててさ。 タバコは止めてんだ。」


ははっ、と笑いながらとんでも無いパチを

こいてしまった。

しかし、もう後には引けない。


「おっ!! そうなのかょ!! マジか、スゲー

な!! 俺もさ、昔空手やっててさぁ~」


今度一緒に話そうぜと肩をバシバシやりな

がら「筋肉あんなー、やっぱボクシングの

お陰か」などと、楽しそうに話しかけてく

る。


…うむ。

筋トレはどうやら役に立ったようだ。

嘘八百でとにかくリーダー格と仲良くなっ

た俺は、そのグループの中でも一目置かれ

る存在になった。



俺、着々と不良になってるぜー!!