瞳が映す景色


携帯電話片手に、独りきりの部屋で、オレの分の冷めきったココアを飲み干した。実はあまり好きな飲み物じゃない。けど、今この心が軽くなっているのは、ココアと……藁科のおかげなのは明白だ。


――自分なら、オレを救えると思ったんだろう か。


制服のままだった。指先がとても赤かった。どれだけ、オレの家の前にいてくれたのか。あそこにいて、もし誰かに見られたらなんて、そんなこと気にも回らないほど、心配してくれていたんだろうか。




明日から元に戻るなんて、藁科の言う通り、証明するのは来年だ。


それまで確信を持てないことは、負担になってしまうのだろうか。


けど、きっと、藁科はもうここへは来ない。


でも、それでいい。


背後からマフラーを巻いた時、オレだって感じた藁科の匂いに思わず――抱きしめてしまいそうになった。


こんな流されやすいオレなんかの近くになんて、 来なくていい。