瞳が映す景色


なんてことを……口にしてしまったのか。


藁科の全てが一瞬で凍りつく。その姿を目にして、やっと我に返った。


……最低だ。オレは。


「ごっ、ごめんっ、すまなかったっ!! 今日はおかしいんだ。明日からは……元に戻るから」


「…………明日じゃ、冬休みです。確認なんて……」


氷は僅かな時間で解けてくれて。


やっぱり藁科は立派じゃないか。止まってばかりのオレみたいじゃなく、動揺なんかすぐに吹き飛ばせる。


「……本当に申し訳なかった。今のは忘れてくれ」


「忘れなきゃ、いけない?」


「ああ。全部、卑怯だった。オレ」


「――じゃあ、特別にそうしてあげます」


ぎこちなく立ち上がった藁科が、湯のみを手にキッチンへ向かう。


「洗ったりしなくていい。オレがやるから」


「、はい。私、そろそろ帰ります」


そう告げた背中は細くて小さくて儚げで。


「送ってくよ」


それは自然と紡がれた言葉。守らなければと、思った。