瞳が映す景色


答えず話題を変えた。


「今日のオレは、あの時と同じように見えた?」


「、はい」


少し、不服そうだ。


確かに落ち込むことはあったが。笑っちまう。あんな、くだらないかもしれないこと。


だから、きっと藁科の勘違いだ。


「伊藤先生。聞いただろ? 今学期で結婚退職って」


「はい」


「……付き合ってた。伊藤先生と。春頃まで。向こうから言われて付き合った。そこそこ好きにもなれた。デートもそれなり。同じ職場だし、カッコつけて仕事も力入れた。――半年経たないうちに振られた。理由も訊かず穏便に別れた。それで今日、こんなに短い期間の付き合いで誰かと結婚だってさ」


しばらく固まって動かなかった藁科は、


知って、いただろうか?