――……
まだオレが藁科を知らなかった頃のこと。
学校で、生徒の飛び降り自殺があった。
その生徒との交流は一切なかった。目撃者は教師も生徒も大勢いて、オレはその中のひとり。一番後ろにいただけ。
まず最初に、林檎が降ってきた。
気づき、屋上を見上げると……
次に人が降ってきた。
オレはそれを見て眩暈を起こし、ひとりで立っていられなくなった。
誰にも見られていなかったはず。知っているのは、助けてくれた白鳥先生だけのはず。
……だったのに。
「見られてたのか……」
「――はい」
幸い、その生徒は奇跡みたいに助かった。けど、あれ以来、校内で姿を見ることはなかった。
辞めたそうだ。自殺未遂の理由は誰も知らないまま。
オレは……恐ろしくてたまらなかった。



