「元気してたよー。なんかね、同僚の方も風邪みたいで、お見舞いにって、幕の内を買っていってくれた」
「なにそれっ。嫌がらせにしかとられないんじゃない?」
「だよね。思った。――しかし、あの顔は福眼だったわ。小町ちゃん、毎日あんなのと顔合わせてたら、もうあの人しか好きになれないんじゃない?」
「っ、……」
あたしの気持ちなど、どうやら家族には周知だったのか……佳奈ちゃんは当然みたいに、それを口にした。
恥ずかしいことこの上ない。兄にはもう仕方ないとして、母や、ましてや父にまでなんて、あまりオープンにその類の話をしてこなかった身としては、失恋の恋なんていたたまれない。
「大、丈夫。美人は三日でとか言うじゃない。 次は、ぬかりなく手に入れてみせます」
「うーん。次、行っちゃうの? 勿体ない」
素朴な疑問として訊ねてくる佳奈ちゃんには、四年前の失恋も慰めてもらった。相手や状況、今の相手が同一人物等、何も知らないでいてくれるのだけど。家族より少し離れていて、でも限りなく近かった優しいお姉さんは、家族な今もこうしてずっと、悪事は怒られるけど、他はどんなことでも寛容に構えてくれる。
「行っちゃうの。――だから佳奈ちゃん。良い美容院教えて」
「やだっ。ベタベタね、相変わらず」
「違う違う。反省で頭丸める的なほう」
綺麗なのに勿体ないと、佳奈ちゃんは伸びかけのあたしの髪を掬い惜しんでくれるけど、進歩のないあたしは吹っ切る方法が思いつかない。
けど、以前みたいな、後ろを、向いてのことではもうない。
「やっと、思えるようにね、なったことがあるから」
進歩はない行為だけど、確実に気持ちの切り替えの補助にはなる。
「だから、切っちゃおうかな、って」
ああ。こんなことでなんて、あたしはやっぱり単純だ。



