「……て、くれた……の?」
「っ」
弱く掠れた声に反して引っ込めようとしたあたしの手。それを掴む熱い手には力が籠っていて、なんで……そんな朦朧としてるのに。
「来てくれて……あり、がと……」
腫れた目元は一瞬開けられようとしたみたいだけど、その力は、残ってないみたいだった。
白鳥さんの額と手のひらに挟まれたあたしの冷えた手は、徐々に熱が浸透してくる。こっちの低い体温が気持ちいいみたいに、白鳥さんの口元がほころんだ。
苦しいんなら安静にしていてほしい。でも、未だあたしの手は解放されない。嬉しい、なんて、不謹慎なのに思ってしまう。
「しっ――」
「嬉し……い、な」
そんな、こと、言わないで。
ううん。
もっと、言って。
「――何か、欲しいもの、ある?」
掠れ掠れの声だけが覚醒している状態なだけで、またすぐに眠ってしまいそうだ。その前に水分を摂っておいたほうがいい。スポーツドリンクを足の間に挟んでキャップを開け、ストローを差して口元に持っていく。
一口水分を含んでくれたけど、また咳き込んでしまい、あとは続かなかった。
「欲しいもの、ある……よ」
会話で何かを繋ぎ止めるみたいに、白鳥さんは喉を震わせる。
そうして、額に置いたままのあたしの手――左手の、その薬指の根元を、白鳥さんは先まで熱い指でなぞる。
「ここが、まっさらになって、……いつ、も、ずっとそうで……それで、いつか、僕が、そこを飾る、権利が、欲しい」
途切れ途切れの言葉は切実で。
「……」
「ごめん……こうして、今ここに、居てくれるだけ、でも、……奇跡なのに、ね。帰ったら、怒られ……る……」
「……」
「……なら、帰らなければいい。ずっと、僕のとこに」



