「白鳥さんっ!?」
思わず呼んでしまった声に返事はなく、部屋に続く扉の向こうからは、もう何の音もしない。
酷い咳き込みかただった。喉が詰まって息が止まってしまわないだろうか? 床に落ちたものは何だったんだろう。怪我とかしていない?
……………………
「……、お邪魔しますっ」
心配でたまらない。勿論、きっとそれだけじゃない。自分のエゴは山盛りだ。嫌がられるならそれでもいい。
あたしは、白鳥さんの家に上がり込んだ。
覗いた先はリビングダイニングと寝室があって、暖房と加湿器の稼働音だけが室内に響いていているだけ。
身を切るような苦しさが身体も心も支配する。白鳥さんの事情なんかお構いなしに寝室に駆け込んだ。
他は照明が点いたままだったから、真っ暗な寝室に目を凝らしてもすぐに様子がわからない。
「白鳥さんっ、……」
少しのあと、リビングから反対の壁際にあるベッドの上、羽毛布団と毛布に顔以外を埋めて目を閉じる姿がようやく確認出来た。
傍に近寄ると、苦しそうではあるけど呼吸音がして安堵する。視線を落とすと床には体温計があって、さっきの落下物はこれだったんだろう。サイドテーブルに避難させた。
「……んっ」
白鳥さんの呼吸が詰まり寝返りをうつと、ようやく自分が五月蝿く上がり込んでしまった失態に気付く。遅すぎる……。
目は、覚めていないみたい。
どうかそのままでと、忍び足で寝室から退出した。



