瞳が映す景色


「あと、勉強は必勝法があるので」


だったら、それを海堂に教えてやってくれ。長 時間をかけて。ここへ来る暇もないくらいに。


「私、記憶力には自信があります。勉強は苦手。 テストは、教科書、プリント、先生方のちょっとしたお話、全部丸暗記です。声を出して覚えるので、姉から私の自室は『魔女の部屋』と呼ばれています」


「ハハッ、なんだそれっ!?  全然必勝でもないじゃないか」


魔女の部屋――響きがツボで思わず笑ってしまい。


これは弱みになりはしないだろうかと、背筋が凍った。


「片山先生が笑ってくれたの、久しぶり。……好きな人を笑顔にするのはこんなに大変。だから私は、凄くなんてない。クラスで頑張れるのも周りのおかげ。みんなが凄いんですよ」


オレにつられて微笑んだ藁科だったが、次の瞬間、何故か視線を落とす。


「そう思えるのは、素敵なことだ」


「じゃあ先生も素敵です。こんな私にでも、教師としての言葉をちゃんとくれるから。ごちゃまぜにしないから」


「……」


深い茶色の瞳が強さを増した。