「汗だくで倒れちゃったら助けに飛んでいってあげるから、安心して張りきっておいで」
「……それは遠慮しておきます。校内中の女子から呪いをかけられてしまうので。でも――」
ははっと笑い、白鳥は否定をしなかった。そりゃそうだろう。自覚なんか、嫌でも植え付けられるに違いない。
外見は、とりあえず万人受けして全方向美形だ。話すのは初めてだけど、淀みない流れは嫌味なこともそれを感じさせない。さりげなく優しい。そつなく微笑まれたら、それは皆ドキドキするだろう。
「うん。でも、の続きは?」
括ったはずの腹がまだそう出来ていなかったからなのか。でも、いつの間にか嫌な汗はかいていなかった。
さらりとした初夏の風が、おでこと前髪の間を爽やかにすり抜けていく。
身体が熱いのは、分泌されなくなってしまったものが沈殿した?
「――言われなくても頑張ってきます。あたしだって負けるの嫌いだし、先生に言われる前から真剣だったし」
「うん。知ってる。たまに練習行ってたからね。僕も赤組の端くれだから」
「でもっ、お言葉は大変有り難く、励みになったのは確かです。あたしが倒れたら、どうか体育の先生に、米俵を担ぐように運んでと伝えて下さい」
「米俵っ!?何それっ。僕も担がれてみたいかも」
「お姫様抱っこが似合うのは、白組団長ですから」
ツボに入ったのか、白鳥先生の肩は堪えきれないといった様子に震えていた。



