瞳が映す景色


握りしめたペットボトルの冷たさに、小指がじんと痺れる。


「頑張ってね、団長。白組には負けてくれるな」


「負けたら、あたしが飲み会の割増分負担しましょうか?」


「それこそ公務員にはヤバいでしょう。それに負けるなんて言わない。言霊って、けっこう強いよ?」


「ですね。……でも、白組団長の愛らしさは強敵です」


白組団長は、校内上位を争う隣のクラスの可愛いゆるふわ女子。震え上がり、三年の美人お姉さまを推薦したけど、例年通りの三年生は見物要員。一年生は上級生を差し置いてなんてと逃げた。


「コンセプトが違うから問題ないよ」


ならば菜々にとお願いすれば、勝てるのは小ささだけだと怒らせてしまい、白鳥先生と同じようなことを言われた。


白組は、団長の可愛さを生かしたパレードみたいな応援、らしい。


赤組は、正統派の応援風で、女子は学ランを羽織ってのコスプレだ。『風』というのは、そもそも制服はブレザーだし、学ランは女子だけで、男子はワイシャツにネクタイの涼しげな格好だ。……赤組応援プロデューサーの趣味らしく……。


そりゃ、女子の中で一番長身で、ゆるふわからは離れすぎているあたしに白羽の矢が立つわけだけど。


「うん。赤組には君が一番似合ってるよ。赤いハチマキを巻いて、長い髪かっこよく纏めて、見映えする背筋を伸ばして青春の汗振り乱して、声涸れるまで叫んで。――本当に、唯一の団長だ」


「っ」


なのに、言い方ひとつで変わるものだ。


驚いて声も出ない。