「下世話な興味だけで聞くけど、藁科さんに怒られでもした?最低とか、不誠実とか、純粋じゃないとか、歪んでるとか」


酷いなぁと困ったように首を傾げられる。本当に下世話で酷い言われようだ。可哀想に。


きっと、知っても知らなくてもいいことなのに、結果は同じなのに、あたしはそれを知りたがる。


藁科さんは、そんなこときっと言わないだろうけど。きっと、彼女は言ってしまうほど白鳥さんに興味はない。


「言われなかったよ。藁科には」


他の人には言われたんだろうか。


けど、そこはいらない。


「藁科がね、ゲンちゃんを好きになった理由が、僕と一緒だったんだよね。大きなきっかけが、同じタイミングだったんだ」


「……」


「詳しくは、これは言えないかな。ゲンちゃんの情けなくて脆い部分なんて沽券にかかわっちゃうからね」


そんなのいらない。


「僕が大切な人を想う気持ちと何ら変わらないそれは、果たして……安易なんかじゃあ、なかった?だって僕のは絶対に嘘なんかじゃない」


そんなの、自分で分かってもっと苦しめばいい。


「ねえ、僕は、今まで気持ちを伝えてくれた生徒に対して酷かったのかな。刺されてもいいくらい傷付けていたのかな。――言葉を、声を、心を、そこに込められた想いを汚物みたいに扱ってきちゃったよ、ね」


本当、最低な男。自分と同じと感じて、やっと間違いに気付くなんて。


「……………………、だから、大吉もあるって言ったじゃない」