「……、あ~……」
「どうしたの?」
「そっ、そんなことっ……。っ、そうだね~、そうすれば良かった。僕っておバカ」
額には冷や汗で馬鹿だと思う。互いの至らなさを笑えばいいだけのことだったのに、そこに別の理由があると自ら教えてくれていた。
……まあ、いいや。
どうせまたくだらない気まぐれなんだろう。
「膝、揺れてるよ?」
「っ、そうっ!?」
「お腹空いて力入んないなら、ファミレスくらい付き合うよ?独りで入れないって前に言ってたでしょ。うちはとっくに閉店してるし」
「っ!!」
何故か、白鳥さんは更に動揺する。あたしはそんな様子が面白くなって悪戯を仕掛けてばかり。
易々と崩れない仮面みたいな見目麗しいその顔が、初めて意思に逆らって筋肉がよく動き、生身を実感する。普段もくるくると動く表情ではあるけど、あれは適度なコントロール上のものだ。
「行こうよ。ついでに、レンタル店も寄って、第一章あるか見てみようっ」
けれど、
「駄目だっ!!」
あんなに、楽しかった気持ちは一瞬で何処かへ消えてしまった。
声を荒げた白鳥さんはハッと口元を手で覆い、努力で殊更ゆっくり、言い聞かせるみたいに、それは告げられた。
「……――、僕なんかと歩いているところを見られたら、誤解とか面倒でしょう」
……
……
……、
向けられたコントロール上の笑みと柔らかな声に、あたしの全てがすうっと冷めていくのを感じた。
急激に。



