降りたホームは人がまばらで、いつも使う時間帯より音の少ない様子が寒さを一層感じさせる。
後ろでは、車内から軽くジャンプをして降車した無邪気な男が重い音をたてて着地する。仕事の資料と配布物の入った紙袋が、ドスンと音をたてたらしい。
振り返ると、黄色い線のギリギリ内側に白鳥さんはいて、その後方、扉が閉まり動き出した電車内の明るさが、まるで乱反射しているみたいに眩しくて、あたしは思わず真っ黒い冬空を仰ぐ。
「あ~、寒いねっ」
「――うん」
背中が丸まりそうになるのを堪えながら改札へと階段を上がった。
駅構内を抜けるとそこは見慣れた風景で。
けど、いつもより遅い時間のロータリーは、お迎えの自家用車よりもタクシーのほうが多い。
前方右手、帰路じゃない方向に明るい看板を目にし――
「――あっ!!」
何故そうする案が二時間前に浮かばなかったんだろうと、思わず声を出してしまった。
「えっ、どうしたのっ?」
何故か、あたしの少し後ろばかりを歩く白鳥さんが、驚きながら駆け寄ってくる。
「ううんっ。ごめんごめんっ。あれ見てしくじったなって」
あたしが指差した先は明るい看板。それは、二時間前に立ち寄ったレンタル店と同じものだった。
「ここで探してレンタルすれば良かったんじゃない」
わざわざ遠くの街でなんて、馬鹿なことをした。
同じように悔やむかと思った白鳥さんを横目に見上げると、何故か歯切れの悪い――それはまるで、二時間前、既に気付いていたような口ごもりかたと表情だった。



