だって、楽しかったんだ。
どうしよう。とんでもなく、たまらなく、どうしようもなく楽しい――白鳥さんとのカウンターを挟まない会話、生活圏外でのやりとりは、そんな感じだったんだ。
「ん~、無表情?」
だから、そこに嘘が混ざってしまうのは極力少なくしたかった。含まれてしまうもの全ての排除は不可能だとしても。
この人は色々と器用で、……きっと、今までは感じた不快さを秘めていてくれたんだろう。あたしは決して、白鳥さんに感情露わだったわけじゃない。
たとえ本心を言われたからって、傷つくことなんてない。あたしの普通は、もうとっくに受け止めているんだから。
返ってこない反応に居心地を悪くさせられ白鳥さんを見ると、凄く、とても、まるで、難解な課題についての考察をしているみたいだった。
「う~んと、ね――」
あたしたちの最寄り駅到着まであと三分。
考察は、ギリギリまで続けられ、見解は述べられた。
「――少なくとも僕は、無表情だとか無愛想だとか、可愛げがないなんて、これっぽっちも感じたことなかったよ。神様にも誓えるね」
「……」
「本心だよ?」
「…………無表情以外はあたし言ってない。腹立つ」
「うん。それはごめんね。――でも、僕は舌なんて抜かれないよ?」
「………………、久しぶりに安い神様の登場だ。……しかも閻魔様のオマケつき」
真っ直ぐな視線と声に、あたしは心とは反対の態度をとってしまう。
だから――うん。もう、いいや。



