「それは、良かったんじゃないの?」
何に嫉妬をするんだろう。告白を奪いたいわけではないだろうし。
むしろ白鳥さん大活躍。冤罪回避。称えられ、敬われて、多少は大きな顔をしてもいいだろうに。
「高井先生がさ……」
それは、白鳥さんが尊敬する学年主任の人だと、真っ赤な頬を冷えた両の掌で包んで告げられる。長い指は伸ばされ、顔全体も覆いながら。
「寒い?」
「ううん。大丈夫だよ。……――、高井先生はゲンちゃんをすぐに信用したんだ」
目もおでこまで見えなくなってしまったのは、自己嫌悪と恥じる表情を隠してしまいたかったからだと、悟った。
はらり、はらりと紡がれる嫉妬。
自分が、新任だった頃に巻き込まれた同じような騒動。その時、同じように主任だった高井先生は、……白鳥さんを信じてくれてはいたけど、ゲンちゃんよりも、時間は要した。
「僕とゲンちゃんの違いはきっととても多くあるけど、でも、そこに高井先生からの信用度の差がそんなにあったのかなぁ。確かに、女性徒に対して配慮はないけど、それは一線越えた子にだけであって。……普段も、人格変えてまでストイックになるべきだったかなぁ。仕事も、もっと……」
本当に、完全なるやきもちかもしれない。
そこを飛び越えて、多岐に渡り自信喪失は侵食してしまっていた。
馬鹿。独りで、考えるからドツボなんだ。



