瞳が映す景色


「あっ、ばれちゃった?」


相も変わらず、おせっかいだと自分に辟易する。


けど、気付いてしまったものは仕方がない。内に仕舞っておくのは困難だろう。あたしの中は狭量で、余力も相席可能な場所もないのだ。捨て置くことも……。


「……誰でも分かる」


いつものようにへらへら笑い、隠すことでもないからと、それは躊躇することなく形の良い唇が動いた。


お互いの荷物が間に置かれ、あたしも冷たいベンチに座る。


「ちょっとね――色々と、勝手に嫉妬してるんだ」


辺りをはばかるように人妻かと聞けば、どうやら違ったみたいで。……それは常日頃で平気なことらしい。




――幾日か前のこと。だったらしい。


嫉妬の対象者は、同僚教師のゲンちゃん。


卒業間近の告白ラッシュに、ゲンちゃんが巻き込まれた。


白鳥さんは毎度のことが更に件数を増しただけだけど、ゲンちゃんにとっては初めてのことらしく。


「えっ、でも前告白されてなかったっけ?誰かに。その子?」


「記憶力いいね~。藁科のことは今はノーカンで。今回は別の女性徒」


誠実に、バッサリと告白を断ったゲンちゃんは、女生徒から反撃をくらった――まるで走馬灯のように。白鳥さんと、同じような。


フラれた腹いせか襲われたと嘆く女生徒。否定するゲンちゃん。状況を把握したい学年主任。


全てを盗み見、事実を知っていた白鳥さんが現れ、事は事件になるようなことなく幕を引いた。