瞳が映す景色


「アクション……」


待ち時間はさほどなく、ホームに滑り込んできた急行列車の風音にかき消されたあたしの言葉は、決して最後まで紡がれていたわけじゃないど。


聞き逃したと勘違いした白鳥さんは、小首を傾げてくる。


続きを言い淀んだあたしは、顔を背け、そして、反対側に立っていたOLさんふうの可愛い人が白鳥さんをチラチラ見上げているのに気付く。そしてもっと貝になる。


「――電車、見送らない?」



時刻はまだ20時過ぎ。


OLさんの、他にもあるかもしれない同じような視線をものともせず、白鳥さんは北風吹き荒ぶホームのベンチへと向かっていく。


躊躇して、あたしは後を追った。




「――で?」


ささやかな暖房がある待合室を選ばなかったのは、あたしの為らしい。口外出来ない何かだと勝手に決めつけられて、ここなら他人は心配いらないと言う。


寒くないかと差し出された、白鳥さんが巻いていたマフラーは丁重にお断りをした。


ホーム上部にある電光掲示板は、次の急行を十五分後と示していた。五分後の各駅停車では、いずれ抜かされてしまうだろう。


……、


「……アクションもの、借りてたね」


「うん」


借りる理由を晒してから、その行為をするのは反則だ。


気になって、しまうじゃないか。捨て犬よ。


「落ち込むこと、あったんでしょ?」


悪態ばかりだったさっきまでの自分を悔やんだ。