瞳が映す景色


ほくほくとした表情は分からないでもない。右隣の白鳥さんは観賞が叶うかどうか怪しいレンタルしたDVDを鞄に仕舞う。


あたしは、それとは裏腹に、少しだけだけど鬱々とした気分がのしかかる。ぼたん雪が頭上に積もってしまったみたいな。


店を出て空を仰ぐと、駅前の高層ではないビルたちのネオンによって切り取られた、星は見えない快晴の夜空が降る音もなくあるだけ。


「ん、どうしたの?」


じとりと、今度は人間を仰ぐ。


「もう寄り道してかないの?」


「予定はないけど――何?付き合ってほしいとこでもあるとか。構わないよ」


「っ!!違うっ。あたしもう帰るから、一緒の電車なのかと聞いてみただけ」


「機嫌悪いなぁ。そんなに僕と帰るのイヤなんだ」


そんなことは微塵も思っていない。冗談だとは思うけど腹が立つ。


あたしは、そんなふうに見られているんだろうか……?


「……嫌がられてるかもしれないにのにへらへら笑ってばっかりで、超気持ち悪っ」


あたしがどんな悪態をついても、許容量が豊富なのか包容力があるのか、へこたれる様子はない。


自分は切符なのだと小走りに券売機に向かう背中だけは、何故か儚げに感じるのはあたしの罪悪感からか、さっきよぎった鬱々か。


どちらにしても、あたしなのだ。


……見上げてくる捨て犬には弱いのだ。


いや。今日は、見上げているばかりだったけど。