「じゃあ、今年のクリスマスはこっちのバイト無理だね。もうすぐ申し込みなんだ」
「だね。ごめん、菜々」
「なんで謝るの。別に私の家の仕事じゃないし構わないよ」
「ありがと。でも、ちょっと惜しい。時給がいいのが魅力だよね。そっちは」
菜々は、大学に入ってからずっと、高校の頃は年齢制限があって出来なかった、デパ地下にある憧れのチョコレート店で短期募集がある度にバイトをしている。何度目からか、店舗側から時期になると連絡があるようになった。
将来的にもそこで就職したいらしく、アピールも忘れずだ。どうやらそちらも順調で、内定まではあと少し、店長や本部から来る営業さんの推薦はもぎとっているらしい。
あたしも、去年のクリスマスとバレンタインは菜々から誘われて一緒のバイトに勤しんだ。時給は悪くないし、店長も優しくて最高だった。問題があったとしたら……制服が可愛すぎて、長身でショートカットなあたしには若干、似合わなかったこと。
「まあ、短期だからね。荒波に乗るのも楽しいしっ」
当然、小さくてふわふわした外見の菜々には大変似合っていた。濃紺のAラインのワンピースに、白に近い薄い水色のエプロン、エプロンと同色の帽子を装着したとき、思わず菜々の頭を撫で回して怒られてしまった。身長が低いことをネタにされたと勘違いしたらしい。



