瞳が映す景色


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「――みたいなバイトを、ウチでしてみない?菜々」


「嫌」


小さくてふわふわした外見を確実に裏切る辛辣さで、親友は即座に断りの返事を寄越してきた。


夕方の、大学から少し離れた所にある穴場カフェは、名が知れてきて、そろそろ穴場ではなくなってきた。残念。ここのタルトが売り切れで食べられなくなる日もそう遠くないかもしれない。空いているテーブルがない光景を眺めて思う。


冷めてきたカフェモカを一口する。


「半分……」


「受け持たない。バイト折半て何よ」


「だって~、いい加減鬱陶しいんだもん」


「家が大好きでいっつも直帰してるから、結局ほぼ毎日バイトすることになるんじゃない。あの人はその対価」


「対価ってそういう使い方?……あてもなくブラブラって、やりにくいよ。突然予定入るのは、バイト休める状況下だからこそちゃんとしてたい部分だし」


「うん。そういうとこは大好きよ、こまっちゃん。――最初は心配だったけど、おウチは上手くいってるみたいだし良かった。あとは放っておこう」


「……その『こまっちゃん』って呼び方、やめない?前みたく『小町』でいいよ、もう」


高校から一緒の菜々に、名前負けしてるんじゃないかしらと最近相談したところ、馴染めないあだ名で呼ばれるようになった。……困ったちゃん、みたいでちょっとやめてほしい。