「大丈夫だよ」
あたしがそう言ってくれるのを、きっと待っていたと思う。人間、誰かひとりくらいには許してほしいものだ。多分、確率は高く、白鳥さんは許しをもらえていない。
「……」
「きっと藁科さんは、白鳥さんの小細工なんかにうちひしがれたことはないよ。そんなちゃっちい小細工、誰にも通用しない」
「まだまだかなあ。僕は」
「まだまだまだまだですっ。それに、何も知らない気づかない藁科さんには、小細工なんて存在してないものなんだから。――それでも心痛むなら、ここぞという機会があれば、少し教師の域越えてでも助けてあげなよ。もちろん、転びそうなときもね」
もし、それが可能になれたら、白鳥さんのバランスは、整うかもしれない。
簡単そうだけど難しいこと。それを出来れば、きっと。
「――うん。そんな機会があれば」
軽く軽~く、けど、小指を約束事だと曲げて、極上の微笑みを向けられた。
白鳥さんは阿呆だ。そんなふうにしか笑えないから、生徒は構わず恋慕するのだ。そこのバランスも是非とも調整していただければ、もっと自分も楽になるといつか教えてあげよう。
「取り敢えず、瓶底眼鏡にボサボサ頭、くっさいジャージで毎日通えば?」
「う~ん。ギャップがあるのもトラブル率高いし、オシャレしたいもんっ」
「……、そうですか」



