どうでもいい話ばかり聞かされて、いい加減帰りたくなったあたしは、さっきのを締めの言葉として本日の懺悔部屋を店じまいとしようとした。兄はもうとっくにそうしているようで、調理場の灯りは消えていた。
「ああっ!!待って待って。ここからが相談の本番っ」
「あたし相談は受け付けないって言ったでしょっ」
袖を引かれそうな勢いで引き留められ、慌てて店内に戻っていつものカウンターから顔を出す。
潤んだ目をして捨て犬みたいに見上げられては、そういう犬に弱いあたしはまた付き合ってしまう。きっと、白鳥さんがしゃがんだのは計画的だ。上目遣いって、漏れなくヤバい。
「……僕さ、藁科に結構酷いことしてたかも。男子のクラス委員とくっつけようとしたり……そのとき、確かにゲンちゃんも僕の隣にいたよなって」
「人のだったら、教師に恋愛降りかかってようと寛大だね……」
「わざと、助けなかったこともあった。つまづいたときとか」
「転びそうなのには手を貸してもよかったかもね」
「ちゃあんと、あんないい子が、生徒として居てくれてたのに、僕の憶測だけで接してしまってたよ……」
「まあ、その通りだよね」
そんなこと、なのかもしれない後悔は、白鳥さんだから、そんなことでこんなに悩むのだろう。
だったら、酷い部分も、もう少しどうにかすればいいのに。



