「確かに、ここ一ヶ月くらいかな。藁科は言葉遣い綺麗になったなって感じてた。まだまだ無理矢理だったけど」
「ふぅん」
「行く先は同じだったみたいで、藁科はゲンちゃんがいる部屋に入ってった。――覗き見したら、アップルパイと団子を取り替えてあげてたんだ」
林檎が苦手なことを知ってるのは僕だけで良かったのに――白鳥さんは、訳の分からないところで寂しげだった。
アップルパイは、どうやら和風カフェの残り物で、林檎が苦手なゲンちゃんの為に、クラス委員の藁科さんが取り替えに来てくれたらしく。
「律儀に優しい子だね。藁科さん」
あたしなら、さっさとキャンプファイアに出向くだろう。
「うん。あの子はきっと、優しい子だね。そして、貪欲でしたたかな子」
「したたか?」
自分に好意を寄せている生徒に優しいなんて言葉、白鳥さんはあたしが知る限り使わない。――それに、したたかって何だろう。
「告白をね、してたよ。……ゲンちゃんに。藁科が。因みに、団子は完売で無かったはずなんだ」
白鳥さんが頭を抱える姿は、まるで、告白されたのが何故自分じゃないのだというようにも見えて、チグハグじゃないかと若干腹が立った。
「良かったじゃない。悩みの種がひとつ減ったんだから」



