……ああ。気付いたさ。けどそんなの言えるかよっ。見下ろしてそんなこと言うな。
「卒業までは言うつもりなかったんです。先生が困るのは、分かりきってることだから。それ に……高校生活の過ちとか熱病とか言って諭されるのも腹が立つから、卒業して、ずっとずっと伝え続けて本物だって、信じてもらおうっ て」
「藁科がオレを困らせることは何もないだろう? そうか。大学推薦のこと……」
言葉を詰まらせたらいけない。
「そうやって誤魔化さないで下さいっ!! さっきの片山先生の表情で分かりました。ばれちゃったって。私がそんなことも察せない程度だとでもっ? ――それと、あとひとつ。先生、気付いちゃったから、今を逃すと、もうどんなに伝えても何も届かなくなるっ。そんなことになるくらいならっ……」
「藁科やめ……っ」
後頭部は解放され、藁科の小さな手は、今度は両手でオレのポロシャツの襟を掴んだ。
場違いな攻め方はやっぱり子どもだ。まるでマウントポジションをとられているような……ああけど、いっそのこと、殴られていたほうがマシだった。
オレの制止はあっけなく遮られ。
「私っ、片山先生が好きです。本気よ」
「…………、冗談……」
それ以外に、オレが何を言えただろうか。



