「諦めたほうがいい。思ったの。でも……やっぱり好きで大好きで。だから、自分を磨いてちゃんと日々を過ごして、お互いに言い訳出来ないようにして。そして、もう一度先生に逢えたら、その時の状況に任せようって、一度自分を区切った」
だから、連絡はしなかったのだと言う。でも、逢いたくてたまらなかったと言う。
「今日逢えて、想いは変わらなかった。でもね……」
そんなふうに、
「……でも、気持ちを区切れた私は、先生に伝えていい私なのかどうか、自分を疑った」
藁科も迷うのか?
「でもやっぱり好きで愛しくて、でも、もうどうしようって、さっきは混乱しちゃいました。自分が仕掛けた罠に嵌まりました」
――当然だと、思ってもいいだろうか。強く、あろうとしていただけなんだ。人生を少しだけ長く生きてるオレでさえこんななのに。
七つ下の、勉強嫌いで、暗記が大得意で、字を書くのがとんでもなく下手な、愛されるクラス委員だっただけ。
「ここで名前出すのはなんだかだけど……白鳥先生にね、会ってくればいいって言われたの。言ってくれたの。そしたら、ずるいけど、白鳥先生のせいにしてここまで来られた」
「――ずいぶんとまあ、おせっかいな人だ」
けど、感謝しています。
「先生もされたでしょう? おせっかい」
見透かしているのに問われる。
「されたな」
逢えないままでもいられただろう。けど、今こうしていられて、やっぱりたまらなく幸せだと感じるんだ。



