再び下げようとした行為は優しく阻止された。オレの決心は、そんな小さな力でも、藁科だから従ってしまう。
「本当に先生は勝手ね。ちゃんと私の顔見てたら、そんなこと言えなかったよ。――どうしてだと思う?」
冷たい指先で、オレの頬に流れた涙を拭ってくれ る。
「ずっと夢見てた、欲しかった先生からの言葉。 ――それを、今も私が欲しているのかどうか、そうじゃないのか、先生が確かめて?」
「けど……」
だって、そんな都合のいい話。オレの妄想が、勝手に見せてるだけかもしれないじゃないか。
けど、藁科はそれでいいと頷く。
涙でかすんだ目に映った藁科の顔には、オレが欲しい答えしかなくて。
「そんな、都合のいいこと……」
あるはずがない。



