ひとしきり泣きじゃくったあと、気持ちを落ち着 けるからと、一分間目を閉じていてくれと懇願さ れた。
――そうして、一分後。
「なんでっ!?」
「えっ?」
唐突に、両頬をぐいとつねられ、顔を持ち上げられる。
正面には藁科の顔。いつの間にか、藁科までもが地面の上。その姿は、もうオレが知っていた藁科で。寒いから座りなおしてくれるよう頼んだけれど、一喝されて結局はそのまま。
「どうしてっ! 勝手なことばかり言うのっ? ……ていうか私も相当なんだけど……、なんでっ……泣いてるの?」
「……仕方、ないだろ。……それに、藁科だって泣いてた……」
こんなに藁科の前で涙を流してしまったのが恥ずかしくなり、悪態をついてしまった。
でも違うんだ。藁科、ごめんな。
人の弱い部分を目の前でこんなに見せつけられた ら、藁科みたいな人間は優しくならざるを得なくなる。でも、後悔しても遅い。オレがそうしたいと望 んだんだから、想いの全てを知ってほしくなったんだから。
だからせめて、情けない顔なんか……だから、こんなオレなんか見るな。
けれど、下げようとしたオレの顔は、渾身の力でそうさせてもらえなかった。
「――顔、ちゃんと上げて? 先生、私のこと、ちゃんと見て」



