瞳が映す景色


「藁科が好きだった。今でもずっと」


「っ」


「藁科が言ってくれたから教師にしがみつこうとした。寝に帰るだけのアパートも、南向きの心地いい部屋だって藁科が言っただけで、本当にその通りになった。貴重な時間を使って会いに来てくれるのが嬉しかった。――藁科が、その瞳に映す景色は、とてもキレイで愛しくて、オレもその中に入り込みたくなる。これが好きっていう感情じゃなけりゃ、本物はどれなんだよっ」


何も言わないのは、返す言葉もないくらいに情けないからなんだろう。けど、もう、言わせてほしい。


「……でもオレは、藁科の優しさにずっと夢心地で、甘えて甘えて……」


甘えるばかりで、結局、一番大切な藁科のことを傷付けた。あの時、オレがもっとちゃんとしてれば、失わなかったかもしれない。オレのものにならなくても、こんな……


「後悔ばかりなんだ。今もずっと」


こんなに、悲しい思い出として、藁科の中に留まらせてしまうことはなかった。