抱き上げるかたちになってしまった救出の間、近すぎた距離は、恥ずかしすぎて目を合わせていられなかった。
ブランコに座らせた藁科には、あちこちにツツジの枝や葉が刺さっていた。恐る恐る、それらを抜いてやる。後頭部激突を阻止してもらったり、玄関で咄嗟に手を引いたり、思いがけずにということはあった。けど、こんなふうに触れるなんて、初めてだった。
「やわ……、立派な丸みの頭だな」
柔らかい髪に触れて、思わず声になってしまった心模様を誤魔化す。
「ブヒュッ!!」
押し殺したくしゃみ。
「ごめんな。そんなに寒くさせて」
冷たい雪と地面に包まれて、どれだけの時間あそこにいたんだろう。なんで、いてくれたんだろうか。
「私が勝手にしたことなのっ。だって、ああしてなくちゃ先生に見つかるもの。……まさかここに来るなんて。緊急避難です」
「顔も見たくなかったから?」
オレはマフラーを外し、いつかと同じように藁科に巻いてやる。ひとつ違う点は、今日は正面からだということ。
「違いますっ! 先生が困ると思って。私……」
「――確かに、困るな」
「……ほら、やっぱり……」
最初強気に見上げた顔は、今はもう泣いてしまいそうで。
駄目だ。オレも、泣きそうだ。



