瞳が映す景色


「――もしもし」


「……」


「ごめんな。見つけちゃったよ」


「……」


姿は見つけたが、電話越しに話をする。しゃがみ込み、ツツジの中に無理やり埋まっていた藁科に目線を合わせた。けど、小さな身体を出来る限り折りたたまれていては、土下座でもしないと見下ろす格好になってしまう。それでもいいんだが、そうすると、今度は姿が拝めなくなってしまう。


「ずっと、会わないまま、隠れてたかったよな。ごめん」


「……」


「風邪ひくといけないから出てきてくれないか?」


「……卑怯な言い方ばっかり。風邪ひくとか先生が言うの? ……あのままじゃどうやっても凍死体だから、手伝っちゃったじゃないですか。独りよがりもいいとこっ。……手伝って下さい。私、完全に埋まっちゃって、出られません」


その顔は少し怒っていたけれど、藁科はオレを見上げ、手を伸ばしてきた。


……誰にも秘密だ。


こんなことひとつで、眩暈がするくらい身体が熱を帯びただなんて。