瞳が映す景色


電話でなんか足りない。


逢いたい。それだけだった。


「頼むっ!!」


小さな公園の真ん中で懇願する。頭だって下げ る。見ていてくれるかもしれない。


姿はない。気配はない。返事は、返ってこない。


「出てきてくれるまでオレはここを動かない ぞっ! 明日の朝にはオレは凍死体だっ! ……いや、そんなんじゃないな……。……藁科、全部オレのせいにして構わない。そうしてほしい。だから――出てこなくていい。オレが見つけるから。だから、後生だから……」




もう一度、着信履歴の一番上を選んで電話をかける。


ブランコがある後方。茂みと呼ぶに近い、ツツジが植わっている辺りから、オルゴールの音色がした。


あれは――そうだ。一度オレの前でも鳴った、大好きだと言っていたクラシックの音楽。