瞳が映す景色



最後に伝えるつもりだった。今日、藁科に会えて、話せてよかった、と。


救急車の音にオレが疑問を持った時、突然電話は一方的に切られた。


「藁科っ!?」


呼びかけても、もう電話の向こうには誰もいない。けど……。


何故だ……?


さっきからずっと都合のいいことばかりが頭をよぎる。これは、オレの推測が正しいと。


だって仕方がない。通話が切られる直前の救急車の音。オレのほうの音――それが、藁科のほうの音として聞こえてきたんだ。


もしかして、藁科はオレの近くにいる?


なりふり構わず着信履歴の一番上を選んで電話をかけた。最初、繋がったと思ったら即座に通話が切られた。その後からは何度かけても繋がることすらない。


周囲の全景を決して取りこぼさないように気を付けながら姿を探す。不様だとかそんなこと、どうでもよかった。