なのに藁科はそうだと言う。
「あの時、片山先生を好きになれたから。この人の隣で胸張って一緒にいるにはって、毎日考えてたからよ」
「藁科……」
「全てを、元に戻す必要はないでしょう? だから、私がそれまで考えてきたことや、気持ちや行動は、大切にするの。そうしないと先生にも失 礼」
オレが漠然と思っていたカタチにならないものを、藁科はとっくの前に見出していた。
電話で助かった。
「ねえ、先生。今度会えた時……先生は、先生なのかな?」
目の前にいたら、こんな愛しい相手のこと抱きしめずにはいられない。
「ああ。必ず。藁科、本当にごめんな」
「もう謝られるのはイヤ」
「分かった。でも今日、藁……」
……



