「……、ゲンちゃん」
「……なんですか?」
「トイレ、行っておいで」
体勢を変えるふりをして、背中でオレを隠してくれる白鳥さんは、何故か少し怒ったような表情でもあった。
「気付かれないうちに行っておいでよ。……ああもうっ、なんでそんな急に涙するのか……原因はわかるけど、理由が全く不明だ。後で追求だね」
「……」
「僕の服、そんなに吸水性ないし、酔っ払いでもないのに寄りかかりすぎ」
白鳥さんの洋服は、さっきから借りたままだった肩のあたりが塗れて変色していた。突然のことだったから、目の前にあるものでしか対処出来なかったんだ。
「……はい」
不自然にならないよう顔を隠しながら、オレはトイレに直行した。



