「藁科さん、雰囲気変わったよね。前はもうちょっと違った感じだったような。今日の服、似合ってるねっ、すごく」
男子の誰かが、淡い空色のニットごと藁科を褒める。あいつは、違ったかもしれない以前と比べられるほど、藁科を知っているのかと思うと悔しかった。
「確かに」
澤が頷く。
「前はさ、コトハって、そんな色の服着なかったよね。モノトーンが多かった」
話の中心になってしまった藁科が、少し照れたように頬を両手で包む。
「――きっと、似合うとか、そんなのじゃなかったっていうのは分かってるんだけど。選んでくれた色って、相手にとって私はこう映ってるのかな、って。それが、こんなキレイな色なら幸せだよね。そう思うことがあって――そしたら、大好きな色になってた」
「具体的じゃないから分かんないっ」
「うーん。たとえ美月ちゃんでもこれ以上は……」
……秘密。
唇に人差し指を添え、小さな声で囁いたその秘密。元級友たちへの回答は曖昧すぎて、ほとんどが首を傾げていた。おぼろげに理解したやつは落胆の表情をした。



