瞳が映す景色


「成り行き、なとこも、あったりする。誰にも言うなよ?」


ひねり出したのは、そこそこの本音だった。気恥ずかしさを隠す為に鼻をかいていると、魂胆などばれているのか笑われてしまう。


「さっきのと、秘密ふたつですっ。――じゃあ、片山先生は、あまりドキドキしない学生さんだったんですね。心躍るような、なんてこともなく?」


「でも、そんな暗いやつでもなかったからな。そこ重要」


真っ直ぐで深い茶色の瞳は、嘘をつかさせない引力を持ち、そして、答えの全てを真剣に受け止める。


藁科の目は、それだった。だから、すらすらとオレは。


今日は、いつもよりも長く藁科を視た日だった。


「告白、したり、されたりは?」


「あったらもっと実りある学生生活だったろうな」






「……じゃあ――」


その表情に、少し、悪寒がした。


神様が、もう帰れと告げているみたいだ。


「――私みたいなのが、高校生の片山先生に告白したら、どうでしたか?」