雪の妖精がふわりと告げる。
「ホワイトクリスマスになったよ」
藁科の一言で、皆が一斉に曇ったガラス窓を手のひらで拭き始めた。やがて外の景色を確認すると、感嘆の声を漏らす。
「コトハ遅いようっ」
「美月ちゃんごめん。ちょっと寄り道してた」
そう言って、持っていた荷物をテーブルに置く。
「少しだけど差し入れでーす」
「わあっ、ありがとっ! 先生たちが買ってきてくれたけど足んなかったんだ」
「そっか。良かった」
ゆっくりと、藁科がこちらを向く――。
「コトハッ、頭に雪積もってる。溶けてきてるっ!」
その動作は途中で止まった。澤が藁科の頭を掴んだからだ。
「タオルでちゃんと拭かなきゃ。家のほう行くよっ」
「ありがと」
そうして、澤は藁科を連れ、通用口へ向かう。そこは自宅へと続いているらしい。
目が、離せなかった。



