小さな店内、意中の相手の澤がいるテーブルへ走っていく海堂を見送りながら、白鳥さんが今度はオレを諭す。
「――認めれば? とか言わせない分、まだマシだとは思うけどさ……。……認めてる。ゲンちゃん個人の中だけでね。でも、そんなんじゃ消化不良のまま。ずっとずっと、死ぬまで残るよ」
「……」
傷つけて、泣かせて、納得でもしたように見送って。忘れられなくて、逢えなくて、寂しくて、切なくて。今も好きだなんて身勝手な想い……独りで、抱えていくつもりだった。海堂みたいな、真っ直ぐで純なものと一緒にしてはいけないオレの気持ちを外に出すなんて、そんなおこがましいこと……。
「いいんじゃないの?」
「っ、……」
「と、僕は思う。顔に出すぎだよ」
なんで、この人は……ああ。そうか。
「――慧眼、だったですよね」
「? 何が?」
「いえ。独り言ですよ」
白鳥さんは阿呆だ。そんなこと言われたら、それでいいんだって、思っちまうじゃないか。



