瞳が映す景色


「――海堂。それは僕たちも同じだよ。大人も同じ」


まるで――ここは三人だけしかいない世界のように、白鳥さんは声のトーンを下げ、囁く。そして、一瞬目を閉じ、未知の酒を呷るように、オレたちのと同じ炭酸飲料をひと飲みした。


少し、海堂が居住まいを正す。


白鳥さんは時々人を緊張させる。けれど、それは恐怖や威圧ではなく、あくまで、優しさの残る。


「先生たちみたいなオッサンでも?」


だから、海堂もそんなことを言える。


「ははっ。――大人になるって、全て可能になることじゃないって思い知ったね。変わらない部分なんて山のよう。変わることもたくさんだけど。働くようになって……昔、縛られていたことからは解放されたけど、考えずとも動けていたことには逆に、とかね。少し、自由になるお金が増えて。重い、時には理不尽な荷物背負って。狡猾になって」


「うへー……」


「って、ここまでだけだとドン引きだろうけど、きっと悪いものではないから安心しといで。今、渡りきれないことでも、今より強くなれていて、頑張れることも増えていくんだ。それは自分の実績と自信になる」


「――オレも、白鳥先生に同意」


「便乗だなあ、ゲンちゃんは」


「本心です」


綺麗ごとだと言うやつもいるだろうけれど。オレはきっと、まだそこまで大人になれていないけれど。