瞳が映す景色


その寂しい言い回しにオレは無言し、気付かなかった海堂は何だと尋ねる。


「それはね――婚姻届を……」


告げられたイベントは、大したことであるような、ないようなものだった。


婚姻届。もう可能な年齢だと、洗礼がわりにと、区役所へ出向き、仮想親友のために婚姻届をもらってこようと、白鳥先生は考えたらしい。


「やっぱり、出向く時は大人びた格好をしてったほうがいいかとか。計画は完璧だったんだけどね~」


「……白鳥さん。もう寂しくなるから言わなくていいです」


「そう? だったら今度、ゲンちゃんでリベンジさせてもらおっかな」


「要りませんっ」


白鳥さんの提案に、純な海堂はとびきり照れてしまって赤くなる。熱を冷まそうと、グラスいっぱいの炭酸飲料を呷り、咳き込む。こいういところが残っているのはいいと思う。微笑ましい光景は、意中の人にも見てもらいたかったものだ。


「……でも、そっか……」


ひとしきり照れた後、海堂が呟く。


「俺、もう十九になっちゃった。――昔は、今の自分の歳なんて、想像も出来ないくらい大人だった。けど、何も変わらない……変われないのか。考えてることも悩みも一緒。ガキのまんま」


昔なんて言葉は時期尚早だと感じる気持ちは、もしかしたら、自分たちにも思われていることなのだろうか。