瞳が映す景色


店内では、去年の白鳥さん担任クラスの半分以上が笑顔で迎えてくれていた。


「さあ、みんな。片山先生の荷物を各テーブルに配って~」


オレの腕はやっと荷物から解放され、視界は瞬く間に良好となる。暖かな室内に曇ってきた眼鏡が見つかり、一度爆笑される。


そうして、


真っ先に確かめたが――全景を見渡せるようになって再確認し、鼓動の速さは若干治まる。


「だってゲンちゃん、言ったら来ないでしょ」


「……さあね。あと、ゲンちゃんは、今呼ばなくても」


「もう生徒じゃないし、いいんじゃない? 気にしてたのはそこでしょう。それと、さあねなんて言わないの。気持ち分かるけど、傷を舐め合う仲間仲間っ」


白鳥さんに背中を押され、店の一番奥へと連れていかれながら、耳の近くで囁かれた。


「――藁科は、いないよ」


そんなこと……真っ先に確認したさ。


いないだろう。オレが来ることになっていたのに。