「では、旦那様とお呼びしても?」


「ええ、その方が助かるわね。あたしはリリスと呼ぶわ。」



不思議とこの人の、旦那様のオネエ口調にも次第に慣れてきた。



「それから、貴女の今後についてだけれど、“学問を続けたい”でよかったかしら?」

「はい。お願いします。」



即答すると、旦那様に不思議なものを見るような目でしばし見つめられる。

基本的にこの年のご令嬢の興味の矛先といえば、最新のドレスに裁縫、それに社交界での噂など…


間違っても学問をしたいなどという色気も何もないことを言うのは国中の貴族を探しても私くらいなものだろう。