式は無事に終わり、帰りの馬車のなか。リリスはぐったりした様子で座席にもたれかかっていた。


長い緊張から解放され、体から力が抜けていく。


「お疲れ様。大丈夫?」


麗しい自分の夫の声にゆるりと視線を上げた。



「ええ、お気遣いありがとうございます。けれど、公爵様のご心配には及びませんわ。」



この人には最初に会ったときから醜態ばかり披露している気がする。



「その、公爵様、ってやめてくれるかしら?形だけでもあたしは貴女の夫なのだから。」



そうだ。他の貴族に怪しまれないためにも、呼び方を変えなければいけないのか。