「ー…白」
僕は飼い主さんにこう呼ばれていた。
物心ついた頃から、僕は白なのだ。
「黒!」
こいつは黒、僕と同じ飼い主さんからこう呼ばれていた。
飼い主のご主人様は僕達を大事にしてくれる。
だから僕はご主人様が大好きだ。
でも黒は違うみたい。
どこか浮かない様子。
どうしたのかな。
「どうしたもこうしたもないよ、白。
お前はずっとこのままでいいのか?」
このままって何?黒
「このまま、ご主人様の言う事を聞いて、与えられた餌を食べ、この広い世界を全く知らずに死んでいくことさ。」
何だ、そんなことか
「俺にとっては、全然そんなことじゃないんだよ、白。」
どうして?
僕は不思議に思って尋ねた。
「俺はもっとこの世界のことが知りたい、旅に出たいのさ。」