家に着くと、既に家族は起きていて、応接間に座っていた。


速斗も並んで座る。


「速斗。

今日は遠くまで走っとったん?」

「──んー?

ああ。 街の近くまで行っとった。」

口が裂けても、少女と話し込んでいたなんて言えない。



速斗は統子に会ったことを秘密にした。





今日は中ノ谷の摘果らしい。

午前中に片付けて、午後は休みにしようと速斗の祖父が言う。


午後はお客様がいらっしゃるらしい。


農家の休みは、盆と正月。




もうすぐお盆だ。


子供も大人も仕事を止めてご先祖様をお迎えする準備に勤しむ。



と言っても、子供はほとんどする事が無いので、好きなことが出来る。



お盆は速斗にとって楽しみにしている行事の1つと言える。




今年のお盆は速斗にとって輝かしいものとなりそうな予感がしていた。