破滅の女神 リメイク版

「彼女は…」

この人も何かを知っている様な口ぶりだ。
何か知っているなら教えて欲しい。

「そうだと思うのだが…まだはっきりとは…」

「そうですか…」

「あの…何か知っているなら教えてくれませんか?」

「それは…」

私の問に、二人ははっきりしない返事を返すだけで言葉を飲み込んでしまう。

「それより、息子を紹介しようか。息子のルイスだ」

誤魔化すように笑みを浮かべながら、ダリウスさんは彼の肩に手を置いた。

「初めまして、ルイス・クロードと申します」

にっこりと柔和な微笑を向けられる。
その笑に、心臓がドキッと大きく脈打った。

本当に綺麗な人だ。こんなに綺麗な人始めて見たかもしれない。

「ぁ...リリスです、初めまして」

上手く笑顔が作れなくて、取り敢えずペコリと頭を下げた。

「リリス、その髪について色々と調べねばならん。明日詳しく話してあげよう、それまで此処に居ると良い」

「ぇっ、いいんですか?」

こんな所に居させて貰うなんて…何だか。
でも他に行く所が無いのも事実だ。

「構わんよ、きっと君はとても大切な存在になるだろうからな…」

「大切な…存在?」

何の事?首を傾げるが、ダリウスさんはただ柔らかく笑みを浮かべているだけだった。

「ルイス、彼女を部屋に案内してあげなさい」

「分かりました。行こうか、リリス」

「はい…」

取り敢えず今はお世話になる他無い。
小さく頷き、一度ダリウスさんに頭を下げてルイスさんと共に部屋を後にした。

「あの、ありがとうございます…色々と」

「いいんだよ。それより、本当に綺麗な髪だね」

そう言ってルイスさんは、隣を歩く私の髪を見つめた。
褒められるのは確かに嬉しい事だが、この奇妙な姿は素直に喜べない。

「いえ、本当は赤い色だったんです。目も赤かったはずなのに…」

私はあまり好きじゃないんです。普通じゃないから…。
そう言って自嘲の笑を浮かべた。

「そうかい?俺は素敵だと思うけど」

「そんな事、初めて言われましたよ」

素敵…かぁ。物珍しいからそう言ってるのではないだろうか。
そう卑屈に考えてしまう自分が本当に嫌になる。

「明日、父上がビリアを呼んでくれるそうだから。色々教えて貰うと良い」

「…ビリア…?」

「あぁごめん、知らないよね。この国で随分世話になっている魔女なんだ」

魔女…なんて本当に居るのだろうか。
まぁ、実際非現実的な事が今起こっているんだ。魔女くらいで一々驚いていたら身が持たない。

「今日は色々あって疲れただろう?俺も詳しくは知らないけど、困った事があったら言って?」

出来る限り力になるから。そう言ってルイスさんは目を細めて微笑む。
人に優しくされる事が殆ど無かった私は、微かに戸惑いの表情を浮かべた。
不器用で、どうやって好意を受け取れば良いのか…と目を伏せて考え込んでしまう。